近年、美容師の間で注目を集めている「香草カラー」をご存じでしょうか。
植物由来のハーブエキスに加え、酸化染料も含むことで髪と頭皮に優しい処方を実現しつつ、高い染まりを実感できる新感覚のヘアカラーです。
従来のアルカリカラーやヘナ、ヘアマニキュアとも異なる独自の魅力を備えており、白髪世代を中心に人気が広がっています。
しかし「本当にダメージは少ないのか」「黒髪を明るくできるのか」など、その実態を詳しく知らない方も多いかもしれません。
本記事では美容師の視点から、香草カラーの成分や特徴、施術手順や他のカラーとの違い、そしてカラーチャートの見方まで徹底的に解説します。
さらに、実践に役立つポイントや導入時の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
香草カラーとは?

香草カラーとは、植物由来のハーブエキスと酸化染料を組み合わせたヘアカラーです。
最大の特徴は粉末状のカラー剤で、漢方やハーブなどの成分を豊富に含んでいることです。
従来のアルカリカラーより髪や頭皮にかかる負担が少なく、白髪をしっかりカバーできる利点があります。
ただし、強いアルカリ剤を使用しない分、黒髪を明るくするのは苦手で、基本的にはトーンダウンや白髪染めに適したカラー剤です。
ジアミン系の酸化染料を含むため、完全に“植物100%”ではない点も理解しておく必要があります。
香草カラーの主成分と特徴

香草カラーには、甘草(カンゾウ)やリョクトウなど、複数の植物由来エキスが含まれています。
これらのハーブ成分が、頭皮を健やかに保ち、髪にハリ・コシ・ツヤを与えてくれます。
粉末を水や専用ローションで溶いて使用するため、独特のハーブ香が施術中に広がりやすいのが特徴です。
酸化染料(ジアミン)も配合されているため、ヘナなど完全植物性のカラーよりもしっかりとした発色が可能です。
ただし、ジアミンアレルギーの方は使用できないため、パッチテストが必須となります。
香草カラーの施術方法

1. 準備
まず、香草カラー用の粉末と、指定された割合の水や専用ローションを用意します。
髪は軽くシャンプーして、汚れやスタイリング剤を落としておくと染まりムラを防ぎやすいです。
施術前には、生え際や耳周りに保護クリームを塗り、衣服などを汚さないようにガウンやケープでカバーしましょう。
2. 塗布と放置
調合した香草カラー剤は、粘度がやや低く垂れやすいため、ムラなく塗布するには技術が必要です。
塗布後は髪をラップやキャップで覆い、基本的に自然放置を20〜30分ほど行います。
過度な加温は不要ですが、寒い時期などは遠赤外線ヒーターなどを適度に使用すると発色が促進されます。
3. カラーチェックと酸化促進
放置時間が終了したら、一度カラー剤を軽く落として発色具合を確認します。
香草カラーは空気に触れて酸化する過程で色味が深まるため、チェック後も5〜10分ほど自然放置することがあります。
ラップを外した状態でコーミングしながら酸素を行き渡らせると、よりしっかりした色味に仕上がります。
4. シャンプー・仕上げ
仕上げにシャンプーを行いますが、香草カラーは粉末由来の粒子が残りやすいため、しっかり洗い流しましょう。
髪と頭皮を丁寧にすすぎ、必要に応じてトリートメントを使います。
ドライヤーで乾かせば、ハーブのトリートメント効果でハリとコシが出た自然な仕上がりを実感できます。
他のヘアカラーとの違い

1. 酸化染毛剤(一般的なアルカリカラー)との比較
通常のアルカリカラーは過酸化水素や強アルカリによって髪を脱色し、メラニン色素を分解しながら発色します。
一方、香草カラーは基本的に脱色効果が弱く、明るいカラーにするのは不得手です。
その代わり、ダメージが少なく頭皮への刺激も抑えられる点が大きな魅力です。
また、髪内部よりも表面に近い部分で染料が働くため、仕上がり後の指通りが良く、ツヤ感も得やすい傾向にあります。
2. ヘナとの違い
ヘナは植物100%の天然カラーで、主にオレンジブラウン系の色味になります。
香草カラーも植物エキスを含みますが、ジアミン系染料を併用することで白髪をしっかりカバーできるのが強みです。
また、ヘナは完全なオーガニック性を求める方に適していますが、染まりが緩やかで何度も重ねる必要があることもあります。
一方の香草カラーは1回の施術でも発色が良く、カラーバリエーションも豊富に用意されているのが特徴です。
3. ヘアマニキュアとの違い
ヘアマニキュアは髪の表面に染料をコーティングする仕組みで、頭皮につくと色が落ちにくい難点があります。
香草カラーは粉末を髪に塗布後、シャンプーで洗い流す形をとるため、地肌が染まりにくいメリットがあります。
また、酸化染料がある程度髪内部にも入り込むことで、ヘアマニキュアよりも色持ちが良い傾向にあります。
ただし、ジアミンアレルギーの方には使えないため、施術時には注意が必要です。
香草カラーのメリット・デメリット
メリット

- ハーブ成分配合によるダメージ軽減。
- 白髪をしっかり染めながらツヤ感のある仕上がり。
- 粉末だからこそ得られるハリ・コシ効果。
- 刺激臭が少なく、サロン内の臭いストレスを低減。
- カラー後も手触りが良く、色落ちが穏やか。
デメリット

- 黒髪を明るくする力が弱いため、トーンアップには不向き。
- ジアミンアレルギーがある方は使用できない。
- 粉末を溶く、塗布後の液ダレ防止など施術に手間がかかる。
- 仕上がりの想定がやや難しく、慣れるまで経験が必要。
実際のカラーチャートについて


香草カラーは、多くのメーカーでブラウン系やナチュラル系、アクセントカラーなど多彩なバリエーションを用意しています。
例えば、「N(ナチュラル)」「B(ブラウン)」などのシリーズに、数字でレベル表記をしたものが一般的です。
N-7やB-5などのように、数字が小さいほど暗め、大きいほど明るめの仕上がりとなります。
また、レッドやパープルなどの補色ラインを使うことで、白髪の色味をより自然に仕上げたり、好みに合わせて微調整することも可能です。
カラーチャートは実際の毛束を確認するのが一番分かりやすいため、施術前にお客様とイメージをしっかり共有すると失敗を防げます。
以上が、香草カラーの詳細と施術方法、他のカラー剤との違いになります。
強いアルカリや過酸化水素を極力使わない処方でありながら、しっかり白髪をカバーできるのが大きな魅力です。
美容師としてお客様に提案する際は、ジアミンアレルギーの有無や希望のトーンなどを十分に確認したうえで、安全に配慮した施術を行いましょう。