ブリーチ剤とは?基礎知識と過酸化水素のメカニズム

ブリーチ剤はメラニン色素を酸化分解することで髪を明るくする薬剤です。
主成分の過酸化水素(H2O2)が分解して生じる活性酸素が、毛髪内部のメラニンを無色化することでベーストーンをリフトします。
日本人の黒髪は赤みが強いため、効率的に赤系メラニンを削ることが美しいブロンドやクリアな寒色系を作るポイントです。
カラー剤との違い
一般的なアルカリカラー剤は「脱色」と「発色」を同時に行いますが、ブリーチは脱色専用。
染料がほぼ含まれないため、ハイトーンやビビッドカラーの下地作りに不可欠です。
特にインナーカラーやハイライトなどコントラストを活かしたデザインでは、均一なリフト力を持つブリーチが仕上がりを左右します。
一剤・二剤の役割
ブリーチ剤の一剤はパウダーまたはクリーム状のアルカリ性ブースターで、キューティクルを開き過酸化水素を髪内部へ導きます。
二剤はオキシ(過酸化水素水)で、分解過程で発生するラジカルがメラニンを酸化。
両剤が反応して初めてリフト力を発揮するため、どちらか一方だけでは効果が出ません。
また、付加成分(プレックス系やケア成分)入りの一剤を選べば、ダメージ低減と褪色防止を同時に狙えます。
何対何で混ぜる?基本割合の目安
日本国内の主流は1 : 2(ブリーチ剤1に対しオキシ2)が標準比率です。
・ハイレベル(15 vol~6%):ブリーチ1 : オキシ2 → 早く強くリフトしたいとき。
・ミドルレベル(10 vol~4.5%):ブリーチ1 : オキシ1.5~2 → ダメージを抑えながら8~10レベルを狙う。
・ロー&ケア(3%以下):ブリーチ1 : オキシ1 → パステル系やウィッグの調整、ケアブリーチ併用で推奨。
ブリーチは粘度管理が重要です。
液状になり過ぎるとリフトムラや薬剤垂れの原因に、硬過ぎると塗布ムラを招きます。
目安はハケからゆっくり落ちるヨーグルト状。
施術環境の温度・湿度でも反応速度が変わるため、チェックタイムを短め(5~10分毎)に設定すると安全です。
ブリーチ剤の種類と特徴を比較

パウダータイプ vs クリームタイプ
パウダータイプは粉末とオキシを混合して使用するためリフト力が高く中〜上級者向けです。
塗布量や粘度を自由に調整できる半面粉塵リスクがありマスク・ゴーグルの着用が必須です。
一方クリームタイプは増粘剤入りでダレにくく塗布ムラを抑えやすいのがメリットです。
操作性を重視するサロンワークやインナーカラーなど細部塗布に最適ですが、パウダーよりやや穏やかなリフトで放置タイムが長くなる傾向があります。
業務用ケアブリーチの選び方
近年はプレックス系成分を含むケアブリーチが主流です。
選定ポイントはリフトスピードとダメージ抑制率そして発熱・粘度の安定性の三つです。
高速リフトを求めるなら15 vol対応のハイパワー型を選びバージン毛やメンズ短髪には低温反応型が適します。
連続施術ではアルカリ緩和処方を選びキューティクルの開閉回数を最小限に抑えましょう。
おすすめブランド別比較(京極 ほか)

- KYOGOKU Bleach ― 超高濃度プレックス配合で18レベルまで狙えるハイスペック。
- Schwarzkopf FIBREPLEX ― ボンドシステムで枝毛・切れ毛を94%抑制(自社調べ)。
- Wella Blondor ― ブルートーン補正粒子入りで赤み・オレンジみをキャンセル。
- ミルボン アディクシー ― 高粘度クリームで根元リタッチが得意。
製品ごとにリフト力・粘度・ケア性能が異なるためサロンコンセプトや客層に合わせて複数ラインを併用するのが最適解です。
導入時はモデルウィッグで発熱テストを行い理想の塗布量と放置タイムを必ず検証しましょう。
オキシ濃度と混合比率の最適化

ブリーチ成功の鍵はオキシ濃度と一剤との混合比率です。
日本の業務用オキシは1.5%・3%・6%・9%の四段階で濃度が高いほどリフト速度は上がります。
一般的な比率は1 : 2ですが塗布部位や室温に合わせて1 : 1.5〜1 : 2.5で微調整してください。
量の目安と水で薄める際の注意
ショート全頭は30〜40 gミディアムは50〜60 gロングは70 g以上が目安です。
水で薄める行為はpHが急降下し酸化力が不安定になるため厳禁です。
必要なら低ボリュームオキシをそのまま使用しケミカルバランスを保ちましょう。
インナーカラー・クリアブリーチの配合例
①インナーカラー — ブリーチ30 g+6%オキシ60 g(1 : 2)放置20〜30分で14 Lvを狙います。
②クリアブリーチ — 低ボリュームオキシ併用でじっくりリフトし淡彩カラーの下地を形成。
③リタッチ専用 — クリーム15 g+1.5%オキシ25 gで根元のみを優しくリフトします。
夏場は薬剤が発熱しやすいためクーリングスプレーと短めチェックタイムで安全管理を徹底してください。
仕上がり別ブリーチレシピ

金色(ゴールド)を狙うレベル設定
目標12〜13 Lv。
ブリーチ30 g+6%オキシ60 gを塗布し20〜35分放置します。
仕上げはイエロートナー10 Lvを3分乳化し黄ばみ防止にはパープルシャンプーを併用します。
青色(アッシュ/ブルー)や透明感カラー
目標15〜16 Lv。
ブリーチ40 g+6%オキシ80 g+3%オキシ20 gで25〜40分放置します。
リフト後はpH4.5の酸リンスを行いブルー:バイオレット=4:1のトナーで透明感を最大化します。
メンズ短髪・金髪坊主の時短アプローチ
目標13 Lv。
ブリーチクリーム25 g+9%オキシ40 gで15〜25分放置します。
頭皮温度が高いためフロント→サイド→バック→トップの順でスピード塗布しクールダウンを徹底します。
施術テクニックとケア

アルミホイルワーク・ウィッグを使った練習
極細ハイライトを均一に取るにはスライス幅3 mm以下とホイル折り返し幅5 mmを徹底します。
ロックフォイルテクニックで根元に密着させブリードを防止しましょう。
ウィッグ練習をタイムラプス撮影し手元角度を解析すると上達が早まります。
髪の毛へのダメージコントロール
塗布量不足は再ブリーチを招き累積ダメージを増大させます。
髪1本あたり2〜2.5 gを目安に置き5分毎にチェックして過剰リフトを避けます。
流し後は酸性トリートメントでpHを4.5へ戻し内部結合を安定化させましょう。
ケアブリーチとアフターケア製品
京極BLEACHやFIBREPLEXなどのボンドブリーチは切れ毛抑制率90%超。
施術後は同シリーズのボンドセラムと紫外線カットスプレーを提案し退色を30%抑制します。
トラブルシューティング&落とし方

顔・首・服についたブリーチ剤の対処法
付着したら濡れコットンで押さえ弱酸性クレンジングで優しく拭き取ります。
服に付いた場合は塩素系漂白剤→30℃以下の水→中性洗剤の順でもみ洗いし色抜けを最小化します。
洗い残しを防ぐシャンプーテクニック
37℃のぬるま湯で3分予洗いし泡立てネットで作った濃密泡シャンプーを2回行います。
襟足・耳裏・生え際は円を描くマイクロムーブで洗浄し、最後に酸リンス30秒で残留物を中和します。
ブリーチ剤が残った場合の色落ちリスク
未反応の過酸化水素が遅延酸化を起こし数日後に褪色や黄ばみが顕在化します。
流し後はブロッティングテストで色移りを確認し、残留があれば弱酸性シャンプーで再洗浄しましょう。
保管・期限管理

開封後の使用期限と保存方法
ブリーチ剤は未開封3年ですが、開封後は6か月〜1年が推奨です。
15〜25℃の空調下で保管し、パウダーはシリカゲル入り密閉容器へ。
二剤は遮光ボトルを採用し、使用後に口元をアルコール拭きして酸化皮膜を防ぎます。
期限切れブリーチ剤の見分け方
パウダーが黄味・灰色に変色したりクリームが分離したら廃棄対象です。
1 gを6%オキシで試薬テストし2分以内に発泡しない場合も即処分しましょう。
よくある質問(知恵袋まとめ)

ブリーチは何日持つ?色持ちのポイント
ブリーチ自体は半永久ですが黄ばみ・くすみは3〜7日で出始めます。
パープルシャンプー週2〜3回と140℃以下のアイロン設定、さらに酸性トリートメントで色持ちを2〜3週間延長可能です。
ドンキなど市販品との違い
市販品は6%固定で低〜中明度止まり、業務用は1.5〜9%を選択できダメージコントロールが可能です。
さらに業務用はプレックス高配合で切れ毛率を60〜90%低減します。
一剤だけ・二剤だけの使用は可能?
一剤のみではメラニン分解が起こらず、二剤のみでは浸透せず表面乾燥を招きます。
必ずメーカー推奨比率で両剤を同時反応させ安全にリフトしてください。
まとめ|美容師が知っておくべき最新ブリーチ情報

トレンドはハイリフト×ダメージレスです。
ボンドテクノロジーや超微粒子パウダーなど革新が進み切れ毛抑制率90%超えが一般化しました。
髪質診断から酸性クローズまで一貫したケミカル設計を行いUV・熱保護商材を提案することで、再来店率を高めましょう。
安全・再現性・長期美を追求する姿勢こそがハイトーン時代を制する鍵です。