資生堂プロフェッショナルの「カラーミューズ バイ プリミエンス」は、鮮やかな発色とトリートメント効果を両立した塩基性ヘアカラークリームです。
アジア人の髪向けに開発されており、ブリーチ毛にも思い通りの色を発色させることができます。
全16色のラインナップには、ビビッドからペールトーンまで自由に組み合わせて無限の色彩表現が可能なカラーが揃っています。
さらに専用のカラーリムーバーを使えば色落としも自在で、繰り返しカラーチェンジを楽しめるのも魅力です。
ここでは美容師向けに、カラーミューズの基本的な使用方法から、特に重要なクリア、カラーリムーバー、ホワイト、アイスシルバー、ピンクという5つのカラー剤・アイテムの活用法について詳しく解説します。
一つひとつの特徴や調合のコツ、仕上がりの質感、他カラーとの組み合わせ、失敗しないためのポイント、使用上の注意点などを網羅します。
プロならではの視点での応用テクニックや実践的なアドバイスも交えていますので、サロンワークの参考にしてください。
カラーミューズ共通の基本使用方法

まず、カラーミューズ カラークリーム全般の基本的な使い方を確認しましょう。
カラーミューズは1剤式(直接染料)で酸化剤を混ぜる必要がなく、そのまま髪に塗布できるトリートメントカラーです。
使用手順は以下の通りです。
- シャンプー後、髪をしっかりタオルドライします(髪が濡れすぎているとカラーが薄まるため)。
- 頭皮につかないようハケで髪全体にカラークリームを塗布します。
ウェット状態の髪に塗ることで均一に伸ばしやすく、ムラなく染められます。 - 10~20分自然放置します。
色味によって発色のスピードが異なるため、髪の状態を見ながら時間調整します。 - 放置後、カラーが出なくなるまで充分にプレーンリンス(お湯ですすぐ)を行います。
その後シャンプーで洗い、最後にコンディショナーまたはトリートメントで仕上げます。
プロのコツ
塗布量はケチらず十分に使いましょう。
メーカー目安ではミディアムヘアで約120g使用します。
カラークリームが足りないと発色ムラや染まり残しの原因になります。
また直前にブリーチした場合は、残留するブリーチ剤がムラ染まりの原因となるため、カラー前にしっかりシャンプーでブリーチを洗い流してください。
色持ち
カラーミューズは半永久染毛料であり、通常色持ちは2〜3週間程度です。
放置時間が短め(10分程度)だと約2週間、長め(20分以上)だと約3週間発色が持続します。
髪のダメージが大きい部分ほど染料が定着しやすく、逆に健康な髪では色落ちが早い傾向があります。染め上がりの鮮やかさと持続期間は髪質やダメージ度合いに左右されるため、必要に応じてカラーバターやカラートリートメントでホームケアしてもらうと良いでしょう。
クリア (CLEAR) の使い方と役割

クリアは無色のカラー剤で、他の色味を薄めるために使用します。
単品では発色しないため、髪に艶を与えるトリートメントグロス的な用途や、他のカラーを希望の明度・彩度に調整するミキサーとして活躍します。
例えばビビッドな原色をパステルカラーにしたい時、クリアを混ぜることで色味自体は変えずに鮮やかさだけを和らげることができます。
クリアの調合方法はシンプルで、混ぜる割合によって色の濃さをコントロールします。
基本の考え方は「混ぜるクリアの量が多いほど淡い色」になるということです。
例えばピンク1に対してクリア1を混ぜれば少し柔らかいピンクに、クリア2~3に増やせばより淡いベビーピンク(いわゆるアイスピンクに近い色合い)になります。
同様にブルーにクリアを加えればサックスブルーのようなパステル調、バイオレットに加えればライラックのような淡い紫色が作れます。
クリアは色味を変えず彩度だけを下げるため、ビビッド系カラーをそのまま薄めたい場合に最適です。
組み合わせの例
クリアは全ての色と相性が良く、目的の色味を維持しつつ明度や透明感を上げたい時に使います。
例えば、ピンク+クリアで桜の花びらのようなペールピンクに、オレンジ+クリアで柔らかなコーラルオレンジに、グリーン+クリアでミント系パステルグリーンに、といった具合です。
クリアは他ブランドで言う「クリアベース」「トランスルーセントカラー」と同様の役割を果たします。
注意点
クリア自体には染料が含まれていないとはいえ、他のカラーと混ぜて使う以上、その混合比は計画的に決めましょう。
クリアを大量に入れすぎると染料濃度が薄まりすぎて発色が弱くなり、色落ちも早まる可能性があります。
また発色の予測が難しい場合は事前にテスト毛束で確認すると安心です。
クリアを混ぜたカラーは一見薄く見えてもしっかり染まるので、放置時間を短めに調整することでさらに淡い仕上がりにもできます。
ホワイト (WHITE) の使い方と活用テクニック

ホワイトは文字通り白色のカラークリームですが、仕上がりはマニキュアの白とは異なり、髪に柔らかな白味をプラスするカラー剤です。
実はホワイト単品で真っ白に発色するわけではなく、極薄いブルー系の色素を含んでいるため、髪の黄ばみを飛ばしてくれる効果があります。
そのためホワイトは、淡いペールトーンを作る際やブリーチ後のホワイトカラー仕上げに大活躍します。
クリアと同様に他の色を薄める用途で使えますが、クリアが「色味そのままに薄める」のに対し、ホワイトは黄色味を抑えてまろやかな色合いにする点で異なります。
例えば、鮮やかなレッドにホワイトを混ぜるとピンク寄りの柔らかい赤みになります。
同じレッドにクリアを混ぜた場合は純粋に薄い赤(ピンクとは異なる)になりますので、ホワイトを使うことで色相自体もややミルキーな雰囲気に変わるわけです。
またオレンジ+ホワイトなら黄味が和らいでサーモンピンクやベージュに近い色調になり、グリーン+ホワイトならくすみのないミントアッシュのような仕上がりが期待できます。
暖色系を淡くしたい時はクリアよりホワイトを使うことで黄ばみが消える分だけ品のあるパステルカラーになります。
単品での仕上がり
ホワイト単品を高明度のブリーチヘアに使うと、髪の持つわずかな黄色味を補正しながら白っぽい艶を与えることができます。
完全な白というより、極薄いシルバー~アッシュヴァイオレットのようなニュアンスで、光の当たり方で白金にも見える繊細な色です。
ホワイトだけでは物足りない場合は、後述のアイスシルバーやバイオレットを混ぜてよりクールな白味を出すことも可能です。
ホワイト調合のコツ
ホワイトは他の色を混ぜて“◯◯ペール”な色を作る用途において、その混ぜる分量がポイントです。
基本的にホワイトに対してごく少量の他色を足すことで淡いカラーを作ります。髪に残っている黄ばみの度合いに応じて調整しますが、目安として「ホワイトに対し30~100倍の比率で混合色を加える」と言われています。
例えば白っぽくしたいラベンダーなら、ホワイト100に対しバイオレット1~3程度を混ぜるイメージです。
これはほぼ白に近いごく薄いパープルですが、黄色味を飛ばして透き通るようなラベンダーホワイトを表現できます。
青味のあるホワイトにさらにヴァイオレットを加えることで徹底的に黄ばみを消し、クールトーンの白髪カラーを実現できます。
使用上の注意
ホワイトを扱う上で最も重要なのはベースの明るさと均一さです。
髪がしっかりとハイトーン(理想はレベル10以上のペールイエロー)になっていないと、ホワイトをのせても十分に発色せず、ムラっぽく見える可能性があります。
またブリーチの抜け具合にムラがあると、その差がホワイトで逆に目立ってしまうことがあります。
そのためホワイト系カラーを施す際は、事前のブリーチ工程でなるべく均一な明るさに整え、必要ならプレカラーやトナーで黄味を軽く消しておくと仕上がりが安定します。
塗布時は濡らした状態の髪に満遍なく揉み込むように塗るとムラになりにくいです。
ホワイトは繊細な色なので、放置時間も様子を見ながら調整し、長く置きすぎて青味が出過ぎないよう注意しましょう。
アイスシルバー (ICE SILVER) の使い方と再現方法
アイスシルバーはその名の通り「氷のように淡い銀色」を実現するカラーです。
カラーミューズの限定色として発売されていた超ペールトーンのシルバーで、ほぼホワイトに近いシルバーグレーの発色が特徴でした。
ブリーチでしっかり抜いた髪に乗せると、黄色味のないクールなシルバーアッシュに染め上がります。まるでプラチナシルバーのウィッグのような透明感が得られるため、ホワイト系カラーの中でも特に人気が高かった色です。
現在アイスシルバーはメーカー生産終了のため入手困難ですが、美容師としては似た色味を他の組み合わせで再現可能です。
アイスシルバーの代替レシピとして推奨されているのが「通常のシルバーカラー+クリア or ホワイト」で作る方法です。
アイスシルバー再現方法
具体的には、カラーミューズのグレイ(Gray)をベースにクリアやホワイトで薄め、必要に応じて微量のブルーまたはバイオレットを足します。
例えばグレイ:ホワイトを1:2で混ぜ、ほんの1割ほどブルーを混色すると、黄色味を抑えたアイスシルバー風の色が作れます。
クリアを使って薄める場合は、前述の通り色味がそのまま薄くなるため、グレイ単品だとやや暖色寄りに感じる場合にはホワイトも併用して調整すると良いでしょう。
仕上がりの印象

アイスシルバー系のカラーは、照明や環境光によって見え方が大きく変わる魅力があります。
自然光では白に近いシルバー、室内の照明下では僅かにブルーグレーにも見えるなど、多彩な表情を見せます。
髪質にもよりますが、ブリーチの土台がしっかりできていればムラなく発色し、髪に上品な艶を与えてくれます。
ホワイト同様に髪の透明感が高く、光が当たるとキラッと反射するようなクールビューティーな仕上がりです。
使用上の注意
アイスシルバー系カラーを綺麗に発色させるには、やはりベースの髪が鍵です。
他のホワイト系同様、レベル10以上の超ハイトーンブリーチが必須で、残留黄ばみは徹底的に排除しておきます。
黄味が残った状態でシルバーをのせると緑がかった灰色になる恐れがあるため要注意です。
これは黄色+青の補色作用で緑っぽく見えてしまうためで、避けるには事前の紫シャンプー等でベースをできるだけクールトーンに振っておくことが有効です。
またアイスシルバーのような淡いカラーは色素量が少ない分、色落ちも早いです。
他の濃色に比べてシャンプー数回でほぼ元の金髪に戻るケースもありますので、長持ちさせたい場合は紫シャンプーで黄ばみを抑えつつ透明感をキープすると良いでしょう。
褪色過程でも黄ばみが出にくいため、色落ちしても金髪ではなくホワイトブロンドっぽくなる点はメリットです。
ピンク (PINK) の使い方とカラー表現
ピンクはカラーミューズの中でも代表的なビビッドカラーで、発色の良さが際立つ人気色です。
鮮やかな原色ピンクでありながら、単品でも嫌味のないクリアな発色をするよう調整されています。
ブリーチベースにそのまま塗るだけでしっかりと鮮烈なピンクに染まり、トリートメントカラー特有のツヤ感も相まって色鮮やかな仕上がりになります。
アジア人の髪でも発色しやすいよう開発されており、赤みの強い髪質でも綺麗に発色するのが嬉しいポイントです。
ピンクの調合・組み合わせについては、単品使用でも十分美しいですが、他の色と組み合わせることで多彩なバリエーションが作れます。
例えば、ピンク+バイオレットを混ぜれば青み寄りのフューシャピンクやパープルピンクが作れます。ピンク+レッドでより深みのあるローズ系に、ピンク+オレンジでコーラルピンクやサーモンピンク系の柔らかい桃色に、ピンク+ブルーで少しくすんだマゼンタやラベンダーピンクに、といった具合です。
さらにクリアやホワイトを加えればパステルピンク~ペールピンクの領域まで自由自在です。
アイスピンクのようにしたい場合は、ピンクにたっぷりクリアを混ぜて薄めるか、ピンクにホワイトを混ぜて黄味を飛ばしつつ薄める方法が効果的です。
クリアを使うと少し蛍光感のある原色寄りの薄ピンクになり、ホワイトを使うとミルキーで柔らかな薄ピンクになるなど、仕上がりの印象も微妙に変化します。
仕上がりのイメージ
ピンクをしっかりブリーチした髪に入れると、その鮮やかさから一目で目を引く華やかなスタイルになります。
派手になりすぎないようパステル寄りに調整すれば、ふんわり可愛いフェミニンな印象にもできます。インナーカラーやポイントカラーとしてピンクを入れると、髪を動かした時にチラリと見える差し色になりお洒落です。
逆に全体をピンクに染めれば個性的でポップな雰囲気を演出できます。色味としては青み系寄りのピンクなので、肌色を綺麗に見せる効果も期待できます。
失敗を防ぐコツ

ピンク系カラーでありがちなのが「染まりムラ」と「色移り」です。
ムラを防ぐには、やはりベースの明るさと髪質の均一化が重要です。
ブリーチで根元から毛先まで均一なレベルまで上げ、ダメージ部分には事前にカラートリートメントや専用のイコライザーで補修しておくと、染料の吸い込みムラを減らせます。
また塩基性カラーはダメージ毛ほど濃く発色しやすい傾向があるため、毛先の過度なブリーチダメージがある場合は時間差で根元より先に流すなど調整すると良いでしょう。
色移りについては、ピンクのような濃い染料は特に注意が必要です。
染めた直後のシャンプーではかなりの染料が流れ出るため、衣服やタオルへの付着に注意してください。
サロンではシャンプー台でしっかりとすすぎ、なるべく冷水に近いぬるま湯で洗うことで染料の流出を抑えます。
また他の色と組み合わせている場合(例えばインナーにホワイト、アウターにピンクなど)、流す際にピンクの染水がホワイト部分に被らないよう細心の注意を払いましょう。
可能であれば色ごとに別々に流すか、アルミホイルで仕切って洗い流すなどの工夫をすると、淡い部分への色移りを防げます。
お客様には、ホームケアでも初回は単独で洗う・色落ち防止のカラシャンプーを使う等をアドバイスすると安心です。
使用上の注意

ピンクを含むビビッドカラーは、頭皮や皮膚に付くと取れにくいので事前に肌際にバリアクリームを塗るなどの対策を行いましょう。
耳や首筋にもカラー剤が付着しないよう注意し、万一付いたらすぐに拭き取ります。
また塩基性カラーは時間が経つほどに髪へ染料が沈着していくため、希望の明るさになったら早めに流すこともポイントです。
逆により濃く発色させたい場合は20分以上置いても髪が傷む心配は少ないですが、必要以上に長く放置しても色持ちが極端に向上するわけではありません。
適切な時間で切り上げ、しっかりすすぐことが次のカラーの発色にも影響します。
最後に、お客様には色落ち過程で徐々に薄いピンク→ベージュピンクっぽく抜けていくことを伝え、色落ちも楽しんでもらえるよう説明すると良いでしょう。
まとめ:カラーミューズ活用のポイント

資生堂「カラーミューズ」はプロの創造力を刺激するカラーシステムです。
クリアやホワイトを駆使して思い通りの淡さに調整したり、ビビッドカラーをミックスしてオリジナルの色味を作ったりと、可能性は無限大です。
失敗を防ぐポイントは、適切なベース作り(ブリーチレベルと髪質調整)、カラー剤の特性理解(クリアとホワイトの使い分け、塩基性カラーの発色傾向)、そして丁寧な塗布・チェックです。
カラーリムーバーという強い味方もあるので、思い切ったカラーチャレンジも後戻りが可能です。
プロ目線での工夫として、例えば「あえてホワイトに少量の色味を混ぜて淡いニュアンスカラーを作る」「複数色をセクションごとに染めて個性的なデザインカラーを作る」などもカラーミューズならではの楽しみです。
塩基性カラーゆえ髪への負担が少なく何度でも色を重ねられるため、季節やトレンドに合わせて色を変えて提案できるのもメリットです。
ぜひ本記事の解説やコツを参考に、カラーミューズを使いこなして自由自在なカラー表現をサロンワークで実現してください。