近年、サロン向けの新しいヘアカラー剤が続々と登場し、お客様に提案できるカラーの幅も広がっています。
中でもミルボン社の「オルディーブ アディクシーカラー」とウエラ社の「イルミナカラー」は、ブリーチなしでも透明感のある仕上がりを狙えるカラー剤として美容師の間で高い人気を誇ります。
本記事では、美容師の皆様がこれらのカラー剤を正しく使い分けられるよう、「色味・仕上がりの違い」「白髪への対応力」「色持ち」「ダメージの少なさ」「黒髪への発色」「他のカラー剤との比較」といった観点からアディクシーカラーとイルミナカラーを詳しく比較していきます。
現場の実感を交えたプロ向けガイドですので、ぜひ日々のカラー提案の参考にしてください。
色味・仕上がりの違いと得意なカラー

まずはカラーの「色味」や「仕上がり」の特徴について、アディクシーカラーとイルミナカラーを比較します。
アディクシーカラー
ベースに高彩度の青色染料を配合し、日本人特有の赤み・ブラウンみを徹底的に打ち消す処方が最大の特徴です。
同じ明るさでも赤みを感じさせないクリアな発色になり、グレージュやブルージュなどの寒色系カラーの再現が得意です。
染料が濃く深みのある色味が出しやすいため、仕上がりは透明感がありながらもどこかくすんだようなお洒落な質感になります。
イルミナカラー
一方、イルミナカラーはツヤ感と透明感を重視したカラー剤で、寒色系から暖色系まで豊富な色味バリエーションと「光」が差し込むような柔らかな仕上がりが魅力です。
特許技術の「マイクロライトテクノロジー」によりキューティクルのダメージを抑えつつ発色させるため、髪表面に上質なツヤが生まれます。
単色でも美しく発色し、たとえばアッシュ系のオーシャンやヴァイオレット系のトワイライトなど透明感ある色から、暖色系のコーラルピンクまで幅広く対応できます。
仕上がりの質感としては、アディクシーカラーは赤みのないクールでマットな質感、イルミナカラーは光沢のあるクリアな質感といった違いがあります。
寒色系カラーに関して言えばアディクシーはより深みのあるグレージュ・ブルー系が得意で、イルミナも透明感の高いアッシュ系ができますがツヤ感が強く柔らかな印象です。
またイルミナカラーはメーカーによるラインアップが豊富で、寒色系以外にもベージュ系やオレンジ系など様々なトーンを表現しやすい点も特徴です。
白髪への対応力の比較

次に、白髪が混ざる髪への対応力について比較します。
アディクシーカラーもイルミナカラーも元々はいわゆるおしゃれ染め(ファッションカラー)として開発されたラインのため、白髪染め専用ではありません。
しかし最近では各メーカーが白髪への対応も視野に入れた色味を拡充しており、少量の白髪であれば両者ともぼかすように染めることが可能です。
アディクシーカラー
アディクシーには白髪対応の「ディープライン」が用意されています。
ブラウン系の染料を使わずに高濃度の色素で白髪をカバーする処方になっており、白髪染め特有の濁った感じを出さず透明感と深みのあるカラーで白髪を染めることができます。
白髪の量がそれほど多くないお客様であれば、ディープラインを混ぜることで明るめのファッションカラーで白髪を馴染ませることも可能です。
イルミナカラー
イルミナカラーは白髪の割合が比較的少ないケース(目安として全体の20%以下)であれば、白髪をぼかしながらおしゃれ染めのような色味を楽しむのに適しています。
例えばほんの少し白髪が混ざってきた初期の段階で、イルミナカラーで明るめのアッシュベージュ系に染めると白髪が目立ちにくくなります。
ただし白髪が多い場合はイルミナだけではカバーしきれず明るく浮いてしまうことがあるため、必要に応じて通常の白髪染めライン(例えばイルミナのシャドウやナイトキャップといった白髪対応色)を併用したり、トーンを落として染める工夫が求められます。
総じて、少量の白髪であればどちらのカラー剤も白髪ぼかしに活用できますが、白髪の割合が多いお客様には従来の白髪染めとの併用や配合比率の調整が必要です。
透明感を保ちながら白髪を染めたい場合は、アディクシーのディープラインで対応するか、イルミナカラーの白髪対応色を使うことで対応できます。
色持ち(カラーの持続性)

染めた後の色持ちの良さについては、アディクシーとイルミナで若干の差が感じられます。
いずれも従来のカラー剤に比べれば発色が綺麗な分、染料の定着が良く退色過程も比較的美しいと言われますが、実際に使ってみると以下のような傾向があります。
アディクシーカラー
アディクシーは高彩度の染料がしっかり髪に入るため、くすみ感や寒色系の色味が長持ちしやすく感じられます。
特に退色後も髪が黄ばみにくく、赤味がぶり返しにくい点は大きな利点です。
染めた直後の濃いめのアッシュ・グレー系の色が徐々に薄くなっても、汚くオレンジに抜けるというよりはベージュっぽい柔らかな色味へ移行していきます。
そのため色落ちの過程も楽しめると評判です。
イルミナカラー
イルミナカラーも色持ちは決して悪くありませんが、アディクシーと比べると若干早めに明るく褪色していく傾向があるとの声もあります。
これはイルミナカラー自体が地毛の明るさをしっかりと削って発色させる高明度カラーであるため、時間経過で染料が抜けると通常のカラーより明るく感じやすいからです。
特にブリーチ履歴のある髪や元々明るい髪にイルミナで染めた場合、発色は綺麗でも退色も早めで、数週間後にはかなり明るく感じることもあります。
ただしイルミナは退色後も髪のツヤ感が保たれやすい傾向があります。
総合すると、色持ち重視で選ぶなら僅差ではありますがアディクシーカラーの方が褪色後も狙った色味が持続しやすい印象です。
イルミナカラーはツヤや透明感が武器なので、たとえ色が多少早く抜けても髪の質感が良く見えるメリットがあります。
一方アディクシーは濃い色味が残りやすく、特に暗めのアッシュ系で染めた場合は1ヶ月経っても赤味が出にくいです。
いずれの場合も、色持ちを良くするには適切なホームケア(カラーシャンプーの使用や熱ダメージ対策など)をお客様に案内することが大切です。
ダメージの少なさ(髪への負担)

カラー施術において髪へのダメージは常に気になるポイントです。
アディクシーとイルミナはいずれも「ダメージ軽減」を謳って登場した経緯がありますが、そのアプローチや実際の体感には違いがあります。
アディクシーカラー
アディクシーは既存のオルディーブシリーズと同様に、高明度・高彩度を実現するためアルカリパワー(明るくする力)が強めの処方です。
赤みを削る分地毛のメラニンをしっかり分解して発色させるので、一度でしっかり明るくなりますが、その分繰り返し使用すると毛先のパサつきが目立ちやすい一面もあります。
ただしミルボン独自の処方でヘアカラー特有の嫌なニオイを抑える和草エキスやシアバターなどの保湿成分が配合されており、施術中の刺激臭が少なく手触りも滑らかに仕上がるよう工夫されています。
イルミナカラー
イルミナカラー最大の特徴の一つが「マイクロライトテクノロジー」によるキューティクルダメージの軽減です。
カラー施術時に発生する金属イオンによる髪表面の微細なダメージを抑制することで、従来よりも手触りの良い仕上がりを可能にしています。
実際、イルミナで染めた後は指通りがなめらかでツヤが増したと感じるお客様も多いです。
またアルカリの強さ自体はファッションカラーとして標準的ですが、明るく染める力が強いためアディクシー同様に何度も繰り返すと内部の乾燥は進みやすい点には留意が必要です。
頭皮への刺激に関しても両者とも通常のカラー剤より感じやすいという声があり、敏感肌の方には保護オイルを使用するなど配慮すると安心です。
総じて、イルミナカラーは最新技術で表面ダメージを抑えツヤのある仕上がりを実現できる点が優れています。
アディクシーも従来品より手触り良く仕上がりますが、高明度のカラー剤ゆえのダメージリスクは同様にあります。
一番大事なのはカラー剤の使い分けで、髪の状態に合わせて必要以上に高アルカリのカラー剤を使わないことです。
例えば根元は伸びた黒髪に合わせて高明度のアディクシーで染め、ダメージの大きい毛先は低アルカリのカラー剤やトリートメントカラーで補うなど、現場では調整しながら施術することで双方のメリットを活かせます。
黒髪に対する発色の良さ

日本人の黒髪にカラーを入れる際、発色の良さ(明るく染める力)は重要な要素です。
アディクシーとイルミナはいずれもブリーチなしでの高発色を売りにしていますが、その点について比較します。
どちらのカラー剤も従来のカラーより明るくする力が強く、黒髪からでも色味を引き出しやすいため、「ブリーチはしたくないけど透明感が欲しい」というお客様には最適です。
アディクシーカラー
地毛の赤みを削りながら染めるアディクシーは、黒髪に対しても狙った寒色系の色を比較的はっきり発色させることができます。
例えば黒髪ベースのお客様をアッシュグレー系に染めたい場合、アディクシーであればブリーチなしでも赤みを感じないグレーっぽい発色に持っていきやすいです。
特にブルー系・グリーン系の寒色の発色力に優れており、暗めのトーン設定でも光に透けたときにカラーの存在感がしっかり出ます。
イルミナカラー
イルミナカラーも黒髪に対して十分な明るさを引き出せます。
高明度でしっかり地毛をトーンアップしつつ透明感のある色を乗せるため、暗めの髪でも柔らかな印象のカラーに仕上がります。
例えばイルミナのオーシャン(アッシュ系)で染めれば黒髪特有の硬い赤みを和らげ、ソフトなアクアブルーのような透明感を表現できます。
イルミナは特にツヤが出やすいので、黒髪由来のパサついた印象を与えない点もメリットです。
ただしアディクシーに比べると色味の濃さはやや抑えめのため、黒髪を明るく見せる効果は高いものの、はっきりとした原色系の発色というよりは柔らかな色づきになります。
総じて、黒髪への発色重視で選ぶならアディクシーカラー、黒髪の硬さをツヤでカバーしたいならイルミナカラーといった使い分けになるでしょう。
どちらも日本人の地毛をブリーチせずに“外国人風”の髪色に近づけられる画期的なカラー剤ですので、お客様の求める仕上がりイメージに応じて使い分けてみてください。
他のカラー剤(N.カラー・スロウカラー・クオルシアカラー)との比較

アディクシーとイルミナ以外にも、近年話題の高機能カラー剤がいくつか存在します。
ここではN.(エヌドット)カラー、スロウカラー、クオルシアカラーの特徴を簡単にご紹介し、アディクシー・イルミナとの違いに触れてみます。
N.カラー
ナプラ社のN.カラーはシアバターなど天然由来成分を多く配合した低刺激・高保湿処方が特徴のオーガニック系カラー剤です。
染料設計は透明感と赤みの軽減を追求しており、寒色系も暖色系も柔らかい発色になります。
ツンとした臭いが少なく頭皮への刺激もマイルドなので、ダメージや刺激を極力抑えたいお客様にはN.カラーが適しています。
ただしアディクシーほど強烈に赤みを消すわけではないため、発色の鮮明さという点ではマイルドな傾向です。
スロウカラー
ビューティーエクスペリエンス社のスロウ(THROW)カラーは、「徹底的に赤みを排除した寒色系特化カラー」として登場しました。
アディクシーとコンセプトは近く、青やグリーンの色素で赤みを消してクリアなアッシュを表現します。
さらに絹成分のDUAL SILK COMPLEX配合による柔らかなツヤ感も特徴です。
発色のクリアさは折り紙付きで、アディクシー同様にグレージュやブルーアッシュを得意とします。
細かな違いとしては、スロウカラーの方が色味のラインナップが細かく分かれており調整しやすいという声もありますが、仕上がりの傾向はアディクシーと近いです。
クオルシアカラー
フィヨーレ社から発売されているクオルシアカラーは、高発色かつ高彩度でビビッドな色表現ができるのがウリのカラー剤です。
ブリーチなしの暗めの髪にも鮮やかな色味を発色できるよう設計されており、特にボルドーやピンクパープル、オリーブなどトレンド感のある色をしっかり出せます。
透明感と軽やかさも両立しているため、明るい髪には淡いペールトーンを、暗めの髪にはしっかりめのビビッドカラーを表現することが可能です。
イルミナやアディクシーが「ナチュラルな透明感」を重視するのに対し、クオルシアはファッション性の高い鮮やかなカラー提案に向いています。
他にもエドルカラー(資生堂)など各メーカーから特徴的なカラー剤が登場していますが、それぞれ「赤みを消した透明感重視」「ダメージケア重視」「高発色重視」といったように得意分野が異なります。
アディクシーとイルミナを中心に、お客様の髪質や希望に合わせてこれらのカラー剤を使い分ければ、より理想のヘアカラーに近づけることができるでしょう。
重要なのはそれぞれのカラー剤の強みを理解し、仕上がりイメージや髪の状態に応じて最適なものを提案することです。
まとめ:お客様に最適なカラー剤を提案するために

ここまでアディクシーカラーとイルミナカラーを中心に、色味の違いから白髪への対応力、色持ち、ダメージ、黒髪への発色、他の人気カラー剤との比較まで詳しく見てきました。
両者とも画期的なカラー剤であり、「透明感のある美しい髪色」を実現できる点では共通していますが、そのアプローチやニュアンスに違いがありました。
簡単に要点を振り返ります。
- 色味・質感: アディクシーは赤みゼロの寒色系・マットな質感が得意。イルミナはツヤ重視で柔らかな透明感カラーが得意。
- 白髪対応: 少量の白髪なら双方対応可。アディクシーは専用ラインで白髪をカバー可能。イルミナは20%以下の白髪をぼかすのに適し、白髪染めと併用も視野。
- 色持ち: アディクシーは退色後も黄ばみにくく色持ち良好。イルミナは若干早めに褪色することもあるがツヤは持続。
- ダメージ:イルミナは特殊技術で表面ダメージ軽減し手触り◎。アディクシーも手触り良いが高明度ゆえ繰り返しで乾燥注意。どちらも高アルカリのため使用頻度に留意。
- 黒髪発色: ブリーチなしでも両者発色良し。アディクシーは濃い寒色発色が得意、イルミナは明るさとツヤで柔らかい色味を表現。
- 他ブランド: N.カラー(低刺激&オーガニック)、スロウカラー(超寒色特化)、クオルシアカラー(高発色ビビッド)など目的に応じて選択肢多数。
最後に、プロの美容師として心に留めておきたいのは、お客様一人ひとりの髪質・ダメージレベル・なりたいイメージが違うということです。
本記事で比較した特徴を参考に、「透明感はこのカラー剤、白髪が多いからこっちをミックスしよう」といったように、その場でベストな提案ができればお客様の満足度も高まるでしょう。
アディクシーカラーとイルミナカラーを上手に使い分けて、ぜひお客様に最適な髪色を提供してあげてください。