美容師の給料って、実際どのくらいなのでしょうか?
美容師を目指す学生や、すでに働いている美容師の方に向けて、平均年収の実態を、年代別・働き方別・地域別・男女別に分けてわかりやすく解説します。
また、収入をアップさせる方法や典型的なキャリアパス(アシスタントからスタイリスト、店長や独立まで)についても紹介します。
美容師の平均年収

厚生労働省の調査によれば、2023年時点で美容師の平均年収は約379.7万円と報告されています。
これは日本の全産業平均(約381.96万円)とほぼ同水準で、大きな差はないとされています。
ただし、別の統計では美容師(理容師含む)の平均年収は約330万円(2022年)とのデータもあり、過去最高額を更新しつつも依然として全国平均より低めです。
この違いは調査対象の範囲(正社員のみかパート含むかなど)によるものですが、いずれにせよ美容師の収入は働き方や経験年数によって差が大きいのが特徴です。
以下で、その具体的な差異を詳しく見てみましょう。
年代別の美容師平均年収
美容師の年収は年齢と経験を重ねるごとに上昇する傾向があります。
新人が多い20代と、経験を積んだ30代以降では大きな差が生まれます。
特に30歳前後は、アシスタントからスタイリストへ独り立ちし指名客を持つようになる時期で、収入面でも一つの転機と言えます。
- 20代美容師の平均年収:おおよそ280〜300万円前後とされています。
この年代はまだアシスタント期間や駆け出しのスタイリストが多く、収入も低めに抑えられがちです。 - 30代美容師の平均年収:340〜420万円前後と大幅にアップします。
例えば男性美容師では30代平均約423万円というデータもあり、20代から30代にかけて収入が一気に上がる傾向が見られます。
技術が向上し指名客が増えることで、この年代で収入が飛躍しやすいのです。 - 40代美容師の平均年収:400万円前後まで上昇します。
キャリアを積んだ40代では店長やベテランスタイリストとして高い役職についている人も増え、安定した顧客基盤により収入も高めになります。
上記はあくまで平均的な目安です。
個人の能力や働く環境によって前後しますが、一般的に経験を積むほど収入が上がりやすい職業だと言えるでしょう。
働き方別(正社員・アシスタント・フリーランスなど)の年収

美容師の収入は、サロンでの役割や働き方によって大きく異なります。
新人見習いなのか、一人前のスタイリストなのか、社員かフリーランスか、といった立場で収入水準が変わってきます。
以下に代表的なポジション・働き方別の年収目安をまとめます。
- アシスタント(見習い期間):サロン入社直後はアシスタントとしてシャンプーや掃除など先輩の補助業務が中心です。
この段階では月収12〜17万円程度、年収にして約200万円前後が一般的です。
アシスタント期間は平均して2~4年(約3年)ほど続き、その間はカットなどメイン施術を任されないため歩合給もほとんどなく、収入は業界内でも最も低い水準となります。 - スタイリスト(正社員):アシスタントを経てスタイリストデビューすると、自分の担当客を持ちカットやカラーなど一通りの施術を任されます。
スタイリストになると基本給に加えて指名料や歩合給(売上に応じたコミッション)が入るようになるため、年収も平均300〜500万円程度に上昇します。
特に指名客が増えるほど報酬も増え、人気スタイリストになれば20代後半でも年収が500万円近くに達するケースもあります。 - 店長・チーフなど管理職:サロンのチーフや店長クラスになると、役職手当も付き収入はさらに上がります。
求人情報では、店長候補の月収が60万円以上という例もあり、年収700万円超えも珍しくありません。
店長になるとサロン運営やスタッフ指導といった管理業務も加わりますが、その責任に見合った高収入が期待できます。 - フリーランス美容師:最近増えているのがフリーランス(業務委託)として働く美容師です。
雇用契約ではなく個人事業主としてサロンと契約し、働く日時や報酬の取り分を自由に決められる働き方です。
フリーランスになると施術1件ごとの歩合率が上がるため、顧客さえしっかりつけば大幅な年収アップが見込めます。
実力あるスタイリストがフリーになり、若くして月50〜100万円(年600万円以上)を稼ぐ例もあります。
ただし、逆に言えば自分の集客力が収入を左右するため、十分なスキルや固定客がない状態で独立するとかえって収入が不安定になるリスクもあります。 - 美容室オーナー(独立開業):自分で美容室を開業しオーナー兼スタイリストとなった場合、売上から経費を引いた残りがそのまま収入となります。
経営が軌道に乗れば年収1,000万円以上も夢ではなく、なかには年収2,000万円を超える成功オーナーも存在します。
ただし、経営者としてサロン全体を切り盛りするため、純粋に技術だけでなく経営スキルや責任感も求められるポジションです。
こうしたように、自身の立場や働き方によって収入レンジは大きく変動します。
最初は誰もが低収入のアシスタントですが、努力してスタイリスト・店長へと昇格したり、独立して成功すれば平均年収をはるかに上回ることも可能です。
地域別の年収差(東京と地方)
美容師の収入は働く地域によっても差異があります。
都市部か地方かでサロンの顧客単価や来客数、物価水準が異なるためです。
特に東京都など大都市圏は美容室の激戦区である一方、美容師の需要も高く物価も高いため、比較的給与水準が高めに設定されている傾向があります。
例えば、厚労省の統計によると、東京都の美容師の平均年収は約426.6万円と全国でもトップクラスに高い水準です。
実は東京よりも平均年収が高いのは愛知県(約446.9万円)で、次いで東京、滋賀県と続きます。
このように地域ごとに需要や経済状況によって年収は大きく異なり、地方でも美容師の需要が高いエリアでは高収入が得られるケースがあります。
一方で地方全体の傾向を見ると地方の平均年収は300万円前後と低めで、東京との格差が見られます。
東京で働くメリットは、高単価な顧客や最新トレンドに触れられる環境でスキルアップしやすい点ですが、その分生活コスト(家賃等)も高いため、手取りで感じる余裕は地方と大差ない場合もあります。
自分が働く場所を選ぶ際には、こうした地域差も考慮すると良いでしょう。
男女による収入差

美容師は男性も女性も活躍している職種ですが、平均収入には男女差が見られます。
一般的に男性美容師の方が平均年収は高めです。
厚生労働省の調査でも、男性美容師の平均年収が約500.3万円、女性美容師は約369.6万円という結果が出ています。
別のデータでも男性約411万円・女性約332万円と、いずれも女性より男性が上回っています。
この男女差が生じる主な理由としては、キャリアの違いとライフイベントの影響が挙げられます。
男性美容師は比較的キャリアを中断しにくく、また店長やマネージャーなど管理職に昇進する機会が多い傾向があります。
40代以降に現場からマネジメント業務に移行し高収入を得る例もあり、これが平均年収を押し上げています。
一方、女性美容師は結婚・出産で一時キャリアを中断するケースが一般的で、育児後に復職する際には技術の勘を取り戻したり顧客を再度獲得し直す必要があるなど、収入面でハンデを負いやすい状況があります。
特に指名客づくりは継続が大切なので、ブランク明けだと収入回復に時間がかかることもあるでしょう。
また、体力面の差も指摘されています。
美容師の仕事は長時間立ちっぱなしで体力勝負な面があり、男性の方が一日に担当できるお客様の数を多くこなせるため、歩合制のサロンでは結果的に男性の方が稼ぎやすいという傾向もあるようです。
もっとも最近では、女性美容師でも管理職に就いたり長く活躍する人も増えており、賞与(ボーナス)の額では女性が男性を上回る傾向も見られるなど、徐々に男女差が縮まる兆しもあります。
女性美容師の収入傾向
20代~30代前半まではサロン勤務で経験を積み、結婚・出産を機に一度離職または時短勤務になり、その後落ち着いてから復帰する――というライフイベントに左右されるパターンが多いようです。
そのため30代後半以降で現場復帰する際には、再度顧客を増やす努力が必要になるケースが見受けられます。
しかし近年は美容師の働き方も多様化しており、結婚後もフリーランスで柔軟に働いたり、育児と両立しやすい雇用形態を選ぶ女性美容師も増えています。
女性でもキャリアを継続しやすい環境が整えば、将来的には男女の収入差も縮まっていく可能性があるでしょう。
美容師が収入をアップさせる方法

「美容師は稼げない」と思われがちですが、工夫次第で収入を上げられる余地が大いにある職業です。
ここでは美容師として収入アップを目指すための具体的な方法をいくつか紹介します。
- 指名客を増やす:収入アップの近道は、何と言っても自分を指名して来店してくれる固定客(ファン)を増やすことです。
指名料や歩合給による報酬が増えるだけでなく、リピート客が増えれば安定して稼げるようになります。
最近ではSNSやブログで積極的に発信し、自分の技術や作品をアピールして集客につなげる美容師も多いですよね。
地道に信頼を積み重ね、「この人にまたお願いしたい」と思われるファン客を増やすことが大切です。 - スキルアップ・資格取得:技術力を高めたり関連する資格を取得して提供できるサービスの幅を広げることで、より多くのお客様に対応できるようになります。
例えばカラーリスト資格や着付け技能などを持っていればサロン内で重宝され、職位(ポジション)が上がるチャンスにもつながります。
また高い技術が評判となれば指名にもつながり、結果的に収入アップに直結します。 - 高単価のサロンや好条件の職場を選ぶ:勤務先の給与体系によっても収入は左右されます。
歩合制・指名制の還元率が高いサロンや、定期昇給・昇格制度が整っている会社だと、頑張りが収入に反映されやすいです。
基本給自体が高めに設定されている高級志向のサロンに転職するのも一つの方法でしょう。
都市部のサロンは物価が高い分給与水準も高めなので、思い切って上京して年収アップを目指す美容師もいます。
ただし環境を変える場合、生活費とのバランスも考慮が必要です。 - 役職に就く:前述の通り、チーフや店長など管理職に就けば役職手当が付与され、収入は大きくアップします。
店舗運営の知識やスタッフマネジメント力も求められますが、それだけに見返りも大きいポジションです。
将来的に店長クラスを目指すのであれば、早めにリーダーシップを発揮して信頼を得ておくと良いでしょう。 - 独立開業・フリーランス転向:十分な顧客基盤と経験があるなら、独立して自分のサロンを開業したりフリーランスになることで収入を飛躍的に伸ばせる可能性があります。
独立には初期費用や経営ノウハウも必要ですが、うまく軌道に乗れば店長以上に収入を得ることも可能です。
例えばカリスマ美容師と呼ばれるような人気スタイリストは、20代半ばでも予約が取れないほど忙しく年収1,000万円を超える人もいると言われます。
フリーランスとしてサロンと契約し働く場合も、売上の多くを自分の取り分にできるため成功すれば高収入が期待できます。
ただし繰り返しになりますが、独立・フリー転向は安定した顧客あってこそ。
タイミングや準備は慎重に計画しましょう。 - 副業・講師活動:サロンワーク以外で収入源を増やす方法もあります。
一例として、美容師向けの講習会やセミナー講師として収入を得る方法です。
自身の得意な技術やノウハウを他の美容師に教えることで、セミナー参加費や講師料を得られます。
最近はオンラインでセミナー開催する人もおり、全国の美容師に向けて発信できるので収入の裾野を広げられます。
ただし講師として活躍するには相応の実力と実績が必要になるため、まずは現場で信頼を築くことが先決です。
以上のように、多角的に努力することで美容師の収入アップは十分可能です。
特に指名客の数と自分のポジション(役職)を上げることが収入増加の鍵になりますので、日々のサロンワークで技術と接客力を磨きつつ、チャンスがあれば積極的に掴んでいきましょう。
美容師のキャリアパス例(アシスタント→スタイリスト→店長・独立)

最後に、美容師としての典型的なキャリアパスの一例を紹介します。もちろん人それぞれ異なりますが、多くの美容師が通る道筋を知っておくと、自分の将来像をイメージしやすくなるでしょう。
1. アシスタントとして下積み開始
美容専門学校を卒業し美容師免許を取得してサロンに就職すると、まずはアシスタントとしてキャリアが始まります。
先輩の補助をしながらシャンプーやカラー塗布、掃除・雑務などをこなし、営業後や休日に練習を積む日々です。
この期間は平均2~4年(約3年)程度で、スタイリストデビューに向けて技術試験に合格できるよう修行します。
年収は先述のように200万円前後と低いですが、この下積み期間で基礎力と忍耐力を養います。
2. スタイリストとしてデビュー
厳しいアシスタント時代を経て技術試験に合格すると、晴れてスタイリスト(いわゆる一人前の美容師)としてデビューします。
自分のお客様を持ち、カットやパーマなど一通りの施術を任されるようになります。
スタイリスト1~2年目はまだ新人扱いですが、数年かけて指名客を増やし売上を伸ばすことで昇給・昇格していきます。
20代後半〜30歳前後でスタイリストとして軌道に乗る人が多く、この頃に年収も大きく伸び始めます。
順調にいけばチーフ(主任)などリーダー的ポジションを任されることもあり、後輩指導やサロン運営の一端も担い始めます。
それに伴い収入もさらにアップし、平均して年収400万円以上の層に仲間入りします。
3. 店長昇格や独立開業などキャリアの発展
スタイリストとして実績を積んだ後のキャリアは大きく分けて二通りあります。
一つはサロン内で昇格し店長やエリアマネージャーになる道です。
店長になればスタッフ管理や売上管理など責任は増しますが、その分前述のように年収700万円以上も狙える高収入ポジションになります。
もう一つはサロンから巣立ち独立する道です。
培った技術と顧客を武器に自分の店を持つ、あるいはフリーランスとして複数店舗と契約して働くなど、働き方は多様です。
独立直後は大変ですが、成功すれば時間の融通も利き収入も大きく向上します。
例えば独立して自分のサロンを持った場合、オーナースタイリストとして年収1,000万円超えも現実的な目標になります。
このように30代以降は「組織の中でキャリアアップ」するか「独立して自分の道を行く」かの選択肢が見えてくる時期です。
どちらの道にもメリットがありますので、自分の性格やライフスタイルに合った方向を選ぶと良いでしょう。
なお、結婚や出産などライフイベントによっては一時的に現場を離れたり働き方を調整する人もいます。
その場合でも美容師免許と経験があれば再スタートは可能なので、自分のペースでキャリアを描いていけるのも美容師という仕事の魅力です。
まとめ

美容師の平均年収は一見低めに思われがちですが、年代やポジションによって大きく異なり、30歳前後から収入が伸びやすいことがわかりました。
東京など都市部で働くか地方で働くか、正社員スタイリストかフリーランスか、といった選択でも年収には差が出ます。
また男女差では女性美容師の収入が低めですが、その背景にはキャリアの中断など様々な要因があることも説明しました。
大切なのは、平均値にとらわれすぎず自分なりの努力で収入を上げていく方法があるということです。
指名客を増やす・スキルアップする・良い職場環境を選ぶ・独立に挑戦する、といった取り組みによって、美容師でも高収入を実現している人は多数存在します。
実際、経験を積んだ美容師の中には年収1,000万円を超える方もいます。
美容師という仕事は、自分の成長と工夫次第で可能性が大きく広がる職業です。
これから美容師を目指す方も、現在美容師として頑張っている方も、ぜひ本記事の情報を参考にしながら将来設計を描いてみてください。
長い下積み期間を乗り越えた先には、自分次第で理想の働き方と収入を手に入れるチャンスがきっと待っています。
頑張る美容師の皆さんのキャリアが実り多いものとなるよう応援しています!