アルティストカラーのデメリットとは?

アルティストカラーは資生堂プロフェッショナルが開発した新世代のヘアカラー剤です。
低ダメージでツヤのある仕上がりが魅力ですが、その反面、いくつかのデメリット(弱点)も存在します。

美容師として導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリット面もしっかり把握しておくことが大切です。
本記事では、アルティストカラーの主なデメリットを解説し、施術時の注意点やお客様への説明ポイントについても紹介します。

カラーレシピの自由度と調整の難しさ

出典:資生堂プロフェッショナル公式サイト

アルティストカラーは全9種類の色味ラインナップをベースにカラーデザインを行います。
必要に応じて色同士をミックスしてレシピを組み立てますが、従来のカラー剤に比べて調整の自由度がやや限られる傾向があります。

ニュートラルグレーを基調とした処方のため、狙った色味に対して若干グレーが強めに出たり、逆に髪の赤みが完全には消えず残るケースもあります。
思い通りの発色に仕上げるには、メーカー推奨のカラーチャートをよく確認し、必要に応じて事前にテスト染めを行うなど慎重な調整が求められます。

低アルカリ処方ゆえに極端に明るいカラーにはリフト(脱色)力が不足しがちで、明度を大きく上げたい場合はブリーチを併用する必要がある点もレシピ作成時の制約と言えるでしょう。

対応する顧客層や髪質の相性

アルティストカラーは幅広い世代に提案できるとされていますが、特に相性の良い顧客層とそうでない層が存在します。
白髪に対するカバー力は100%ではなく「白髪ぼかし」程度のマイルドな染まり具合のため、白髪をしっかり隠したいお客様には不向きです。

実際、通常の白髪染めが100%の白髪カバー力だとすると、アルティストカラーは約70%程度のカバーイメージになります。
白髪がうっすら染まれば良い、あるいは白髪を活かしたおしゃれ染めを楽しみたいという方には喜ばれますが、白髪を完全に見えなくしたい方には物足りなく感じられるでしょう。

また、アルカリ量が少ない分髪への負担は軽減できますが、その分極端に明るいカラーや高彩度カラーを希望する若年層のお客様には単体では対応しづらい場合があります。
ブリーチなしで透明感のある発色を狙える反面、真っ黒な髪を一度でハイトーンにするような劇的な変化は難しいため、カウンセリング時に希望の明るさに応じた施術プランを提案する必要があります。

髪質に関しても、太く硬い髪や地毛の色素が濃い髪の場合、アルティストカラーだけでは十分に明るさが出にくいことがあります。
一方でダメージレスな処方の恩恵は受けられるので、髪の細い方やダメージを避けたい方には適しています。

このように、アルティストカラーの特性に合った顧客層(例:Z世代などの若年層で髪質が比較的柔らかい方、明るめの白髪ぼかしをしたい方)には有効ですが、そうでない場合は他のカラー剤との使い分けも検討が必要です。

仕入れコストや在庫管理

新しいカラー剤をサロンに導入する際には、商品の仕入れコストや在庫管理も考慮しなければなりません。
アルティストカラーは最新技術を搭載した高機能カラー剤であるぶん、従来品よりも価格が高めに設定されている場合があります。

サロン側で一通りの色味を揃えるためには初期投資がかさむ可能性があり、在庫として複数のカラー剤ラインを抱えることによる管理の手間も増えます。
特にアルティストカラーは取り扱いサロンが限られる新商材という背景もあり、導入初期は販売代理店から一定数をまとめて購入する必要があったり、最小ロットが大きめに設定されているケースも考えられます。

そのため「少し試してみたい」場合でもある程度の本数を仕入れる必要があり、在庫リスクを伴います。
また、カラー剤の使用頻度が読みにくい導入当初は、特定の色味だけ減りが早く他が余るといった偏りが生じる可能性もあります。
追加料金制で提供するサロンも多く、実際にアルティストカラー施術は通常カラーにプラス500〜1,500円程度の料金設定とするケースも見られます。

導入コストを回収し利益を確保するためにも、自店の料金設定や在庫回転率を踏まえて計画的に運用することが求められます。

色落ちや退色後の質感の変化

アルティストカラーは色持ちが良いとされ、染めたての美しい色味を長く楽しめるメリットがあります。
しかし、その色落ちの過程には独特の特徴があり、注意が必要です。

一般的なカラー剤では退色が進むと明るくなったり黄味・オレンジ味が出てくることがありますが、アルティストカラーの場合は退色過程がゆるやかで比較的くすみ感のある色味が残りやすい傾向があります。

染めた直後のツヤ感は維持されるものの、時間が経つにつれて髪色が少しマットな質感に移行し、明るく抜けていく感じが弱いという声もあります。
このため、「カラーを入れた直後から退色後まで長く色を楽しみたい」というニーズには応えられますが、「いずれ明るめのトーンに抜けてほしい」というお客様には物足りなく感じられる可能性があります。

質感の面でも、オイルイン処方によるコーティング効果が徐々に落ち着くにつれ、手触りや見た目のツヤが施術直後より多少落ち着くことも考えられます。
もっともダメージ自体は少ないため極端にパサつくわけではありませんが、色抜け後の髪が少しくすんだ印象になる点は事前に把握しておきましょう。

退色後のケアとして、紫シャンプーなどでカラーのくすみを調整したり、ツヤ感を補うトリートメントを提案するなど、アフターケアにも目を配ると安心です。

他ブランドとの併用のしにくさ

アルティストカラーは独自技術の低アルカリ・マイクロオイル処方を採用しているため、他社ブランドのカラー剤と化学的性質が異なります。
基本的に他ブランドのカラー剤との混合や同時使用は推奨されておらず、単一ブランドで完結させる運用が望ましいとされています。

例えば、アルティストカラーと従来のアルカリカラーを同じ施術で混ぜてしまうと、発色バランスが崩れたり染まりにムラが出るリスクがあります。
また、イルミナカラーやアディクシーカラー、イノアカラーなど似たコンセプトの高彩度・低ダメージ系カラー剤が既にサロンにある場合、それらとの住み分けを明確にしないと現場が混乱する恐れもあります。

スタッフ間で「あの人はイルミナ、こっちはアルティスト」などバラバラな運用になると、お客様への仕上がり説明やレシピ共有が難しくなるため注意が必要です。
結果として、アルティストカラーを導入する際は原則としてアルティストのライン内でカラー施術を完結させ、必要に応じて別のブランドのカラー剤と「エリアごとに使い分ける」(例えば白髪の多い根元のみ従来の白髪染めを使用し、その他はアルティストで染める等)工夫が現実的でしょう。

複数ブランドをハイブリッドに活用する場合でも、一緒に混ぜるのではなくそれぞれの特長を活かす形で段階的に使い分けるようにし、仕上がりの統一感を損なわないよう配慮することが大切です。

施術時の注意点

アルティストカラーの効果を最大限に発揮し、デメリットによるトラブルを防ぐためには施術時の注意が欠かせません。
以下のポイントに留意して施術を行いましょう。

  • 適切な塗布量・放置時間の遵守: オイルイン処方のため、塗布量が少なすぎると発色ムラの原因になります。
    必ず十分な量を髪全体に均一に塗布し、メーカー指示の放置時間を守りましょう。
  • スタッフ間で技法を統一: アルティストカラー特有のテクニック(乳化のタイミングやシャンプー方法など)がある場合は、事前に教育を行い全員が同じ手順で施術できるようにします。
    ばらつきがあると仕上がりに差が出る可能性があります。
  • 事前テストとカウンセリング:新しく調合したレシピや初めての髪質に対しては、可能であれば事前にテスト染めを行い色味の出方を確認します。
    また施術前のカウンセリングでお客様の希望色や許容範囲を聞き取り、ギャップが出ないようすり合わせておきます。
  • アフターケアの提案: 施術後の色持ちや退色ケアについてアドバイスしましょう。
    アルティストカラーに合ったホームケア用品(カラーシャンプーやトリートメント)を紹介し、色持ちを良くする工夫を伝えることで満足度が高まります。

顧客への説明ポイント

アルティストカラーのデメリットや特性については、施術前にお客様へ分かりやすく説明しておくことも重要です。
事前に期待値を調整し納得していただくことで、仕上がり後のトラブルやクレームを未然に防げます。 以下にお客様への説明時に押さえておきたいポイントをまとめます。

  • 白髪の仕上がり: 「アルティストカラーは白髪をぼかすように自然に染めるカラー剤です。
    白髪をしっかり真っ黒にはせず、透明感のある仕上がりになります。」と説明し、白髪染めとは異なる仕上がりになることを伝えます。
    完全な白髪カバーを求める方には、必要に応じて通常の白髪染めとの併用も提案しましょう。
  • 明るさの限界: 明るめのカラーを希望する場合、「髪に優しい分、通常のカラーより一度で明るくできる幅が少し狭いです。
    ご希望の明るさによっては先にブリーチをしてからアルティストカラーを乗せる方法もあります。」と、必要なら段階的な施術になることを説明します。
  • 追加料金について: アルティストカラーは高品質な反面コストがかかるため、「当店ではアルティストカラーの場合、通常メニューにプラス料金を頂いております。
    その分、髪へのダメージ軽減や色持ちの良さなどメリットがあります。」と付加価値を含めて案内します。
  • 退色の経過: 施術後の色持ちと変化についても、「このカラーは色落ちがゆっくりで、時間が経っても極端に明るくは抜けずに柔らかい色味が残ります。
    徐々にくすんだトーンになっていくので、気になるようでしたら次回来店時に調整しましょう。」などと説明し、退色後のイメージを共有しておきます。

アルティストカラーの弱点を理解し適切に対策することで、メリットを活かしつつ安心して活用できます。
最新のカラー剤とはいえ万能ではないため、サロンのコンセプトやお客様のニーズに合わせて他ブランドと使い分ける柔軟さも求められます。
デメリットを補う工夫や事前説明を丁寧に行い、お客様にとってベストな提案ができれば、アルティストカラーはサロンワークの強力な武器となるでしょう。

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